コロナ禍 保護者の苦悩と学校との向き合い方

前回の記事では、私が経験したコロナ禍が学校に与えた影響について書きました。今回の記事は、私が見てきたコロナの影響で課題を抱えていた保護者の方の話を書きます。もちろん特定されないよう配慮をして…。

 

私は当時(特に臨時休校中)、保護者との関わりを通じて、あらためて学校の役割や家庭との関わり方について考える機会となりました。この記事を通して、保護者の方も、今後お子さんや学校とどのように向き合っていくことが良いのかを考える機会になればと思います。

 

学校から見えた家庭へもたらしたコロナ禍の苦悩

緊急事態宣言下で臨時休校に追い込まれた期間、各家庭ももちろんコロナ禍にあったわけで、その悩みを学校に訴える人も少なくありませんでした。

 

医療従事者の方の心配、お子さんとの家での過ごし方についての相談、学校が無いことで仕事と子育ての両立の難しさ、様々な困難を抱えていらっしゃいました。

日本中どこの地域でもたくさんの苦悩を抱え、未だにその余波は収まっていはいないでしょう。

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学校は自分たちが受け持っている子どもたちが不安なく登校できるためにどうすればよいかを共に考え、いろいろな手立てを講じてきました。

 

しかし、今思えばそれは裏を返せば子どもが不安なく登校できるようにする、学習の保障をする以外はサポートが難しい、という状況もたくさんありました。

スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーなど連携できる部分もあれば、保護者の方の職業のことや経済的な部分などは立ち入れないものもあります。

 

ホームページにメッセージを載せたり、家庭で取り組める課題を載せたり、電話連絡したりして、やれることをやっていたつもりですが、私も力不足と思いながら、保護者の方に頑張ってもらうしかない、お願いするしかない状況に歯がゆい思いをしました。

医療従事者の苦悩

一番苦労されてきたのは間違いなく医療従事者の方だと思います。

 

私の学校でも、保護者の中で医療従事者の方がいらっしゃいました。

 

「病院に張り付けになっていてもう3ヵ月家に帰れず家族に会えていない。娘のことが心配で仕方がない。」と話をする保護者の方もいらっしゃいました。

 

自分の子が外で感染するかもしれないという全保護者と同じ心配を抱えながら、自分は子どもに会えず毎日コロナ対応に追われる状況だったわけです。幸いそのお子さんは元気に学校で過ごしている様子でしたが、母親に会いたい寂しさが襲ってこないわけがありません。学校は子どもたちにとっては社会の場なので気丈に過ごす姿は見えていても、家庭の姿を想像するだけで本当にいたたまれない気持ちになりました。

 

また、報道等でもありましたが、「自分が病院勤めだから、コロナが感染るといじめの対象になっていないか心配です。」というお話をされている保護者もいらっしゃいました。

 

2020年4月頃でコロナ関連の情報も少なかった時に、自分の命も危険に晒しながらコロナと闘っている方々が、さらに子どものことが心配になっている状況を考えると、絶対子どものことでは心配掛けられないと身が引き締まる思いでした。

そうした方々の思いや言葉を聞くと、無意味とは思いつつも、医療従事者の方々が悲しむような言動に触れると、怒りに震えていたことも記憶しています。

 

ちなみに私の学校でもシトラスリボンプロジェクトなるものを行っていましたが、子どもたちの温かい声が毎日保健室に届いていました。https://citrus-ribbon.com/

 

子どもが家にいることで起こる苦悩

感染への不安に関する直接的な不安ももちろんですが、実は平日いないはずのお子さんが家にいなければいけなかったことで、それだけで家庭の中が非日常の状態になり、保護者の方は多大なストレスを抱えていました。

電話連絡した際に聞いた話では、「家でこんなことをしていて困っているんですよ~。」と話す方が多かったです特にゲームばかりしているという話。家にいる分、指摘しなければいけないことが多く目に付き、つらい言い方をしてしまったり、お子さんと喧嘩のようになって家庭内不和の状態になってしまっている方が非常に多くいと感じました。

 

学校としてはおうちの方の負担やストレスにならないよう(おうちの方が笑顔でいることが子どもにとっても大切)にしていただきたかったので「できればこういう声掛けをしていただきたいですが、喧嘩になりそうだったらこういう風に考えてもよいのではないでしょうか?」などとお話したり、子どもにも電話口で直接促したりする程度しかできないわけです。

 

子どもの生命や健康に危険が及んでいそうな場合はそんなことを言っている場合ではないのでしょうが、私が受け持った子どもの家庭では一応そういった状況にはありませんでした。

 

しかし、コロナ離婚という言葉が囁かれていたように、子どもに対しても、普段家にいない時間帯に一日中騒ぎ立てられたら保護者の方も辟易していたようです。

 

また、「うちの子は家でずっと隔離にも似た状態で我慢しているのに、どうして公園で遊んでいる子どもがいるんだ。学校で指導をしろ。」

 

「家の中で運動できる課題はマンションだからできない。家の前も周りの目があるから出せない。そういう状況も踏まえて課題を出してほしい。」

 

「こっちは先生じゃないから課題を出されても一緒に見て教えられない。課題を出すのは辞めるか課題をしなくてもいいと文言で出してくれ。」

 

「仕事で家にいられない。学校で託児的なことはしてくれないのか。」

 

「課題を出しても家にいるからどうしてもゲームを続けてしまう。先生から言ってもらえないか。」

 

様々なお声をいただきました。保護者の方のお仕事の状況や、ご家庭でのお子さんとの関わりに困っている現状を目の当たりにして、とてもそんなの家庭で何とかしてくれ、という気にはなりませんでした。

 

何とかお子さんに笑顔で接する気持ちになってほしいことや、命を守ることと、ともに過ごす時間を大切にする機会にしてほしいと願うばかりで、保護者の方とお話をしていました。

 

こうしたことも踏まえて、

 

「分散登校開始」や「給食あり」と判断が出た時、感染拡大懸念の声をいただきましたが、自治体や教育委員会から、早めに分散登校を始めたいと感じる情報がずっと小出しに来る理由が分かりました。

 

家庭の中でしか解決できないことや、学校が踏み込めない領域(子にとって親という存在を教員が超えることはできない)があるということは今回の臨時休校で明らかになったことは確かだとは思いますし、保護者の方からも「いかに先生方にいつも子どもに関する大事なことをお任せしていたかが本当に痛感しました。」とおっしゃっていただける方も少なくありませんでした。

 

しかし学校に相談が来た時、子どもの顔を思い浮かべると教員としても子どもの親としても、とても他人事には聞こえないものばかりで、明日は我が身という気持ちで話を聞いていました。

 

緊急事態宣言や臨時休校は各家庭に多大な負担を強いていることを痛感したこの時期でした。

 

 

今一度考える 学校との向き合い方

今、働き方改革が叫ばれ、質が問われ続ける教員も時間外労働の助長で疲弊し、体罰やいじめ、不祥事などの報道によって保護者の不信感を増大させているなど、保護者に理解されなければいけない部分と保護者に理解され難い部分が混沌としている教員にとって非常に厳しい時代であることは確かです。

 

でも、底の底は、家庭や学校の立場の違いを認識しつつも、「子どものためにしなければいけないことやしてあげたいことはやるのが大人であることを示し続けること」という点は同じはずです。

 

まずは、前回の記事でも書いたとおり、学校に子どもたちが集まり、顔を合わせて、一緒に学ぶ場があることは、人と関わりながら生きていく人間社会では不易なものであると学校が証明しなければならないこと。これは学校がやることです。

 

その上で、家庭でのお子さんに関する悩みがあれば学校と共有しましょう。ともに同じ方向を向いて、ともにお子さんに向き合い、ともに子どもを愛する。それがしっかりしていれば、学校と家庭が、しっかりと手を携えていく未来へと向かっていけますし、学校もそれを臨んでいるはずです。

 

まとめ

・医療従事者の方、各家庭の方々の中には、子どもにしっかり向き合う余裕もないほど苦悩を抱えていた。

・家庭での姿は家庭でつくっていくことは前提だが、同じ子どもを育てる大人としてもちろん学校も無関係ではない。悩みを共有し、協力しあえる関係づくりをしていくことで、より多方面から子どもを支援する未来がある。

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